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月明かりの下で

深夜、人通りは勿論のこと車通りすら殆ど無い路上を、車を走らせ家路を急ぐ。
左折しようとスピードを緩めた車のライトに、路上に佇む物体が照らし出された。
不信に思って車を止める。
後続の車どころか、走っている車すらないから停めていても邪魔にはならないだろう。

視力は悪い方ではないから、その物体が何であるかは直ぐに理解出来た。
大きなハサミを携えたザリガニだ。
でも動く様子は全く無い。
車を降りて近寄ってみると、無惨にもしっぽの方が破裂していた。
どうやら道路を半分以上横断したところで、走ってきた車に轢かれたようだ。
潰れていない立派なハサミが、月の光と街頭に照らされて鈍く光っていた。

車は自然界にはないものだから、轢かれて死んだ命が何とも悲しかった。
どうにかしたかったが、消えた命の炎が再び点ることはない。
どうにも仕様がなかったので、自分の車では踏みつけないように避けて、そっとその場を離れた。

夜が明けて月が白くなる頃、きっと誰より早起きな鳥達がその骸を発見するだろう。
その鳥達の命の糧になればいい。
そしたらその死は無駄にならない。
そんな事を思い、潰れた心を慰めながら家に辿り着く。
まだ昇り始めた下弦の月が皓々と輝き、沢山の星も瞬く静かな夜の出来事。
月は静かに空を巡る。
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