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時限爆弾

あるところに、ひとりの人が居た。
皆が好きだったけれど、皆の好きは信じられず、いつも皆の中に居たけれど、いつもひとりだった。
その人は優しい人だったので、困っている人を放っておく事が出来ず、少々おせっかいながらも人々の世話を焼いていた。
「ありがとう」
その言葉が何よりも好きで、その言葉とともにある笑顔が何より宝だった。

子どものお守り、大人のお遣い、老人の話し相手…そして老人の世話。
その人は何でもやった。
必要とされることが嬉しかった。

あるとき、その人は考えた。
時間は止まることが無く、私も歳をとるばかり。
いつか老いて動けなくなってしまうかもしれない、誰かの世話にならなければいけないかもしれない。
必要とされないことも、誰かに迷惑がかかることも嫌だった。
もしも自分の命のリミットを、自分で決めることが出来たなら…。
その人は考えた。

その人は夢を見た。
誰かが案内する空間は見た事も無いところ。
無機質な箱のようなところだった。
その案内人は言った。
「これはお前のタイマーだ。あとどれだけ生きたいか、決めることが出来る」
その人は常々思っている年数を、そのタイマーにセットした。
起きたら枕元に1枚の紙切れが。
そこにはあと何年生きられるか、その数字が書いてあった。

その人はいつもと変わらぬ日々を過ごしていた。
ただ違うのは、リミットが決まっていること。
そこまで頑張れば、楽になれるのだということ。
その人はそれまで以上に優しかった。

あと何年、残りを片手で数えられる位になった頃、その人はある人と出会った。
ある人は、その人の心の中にすっと入り込み、その人はある人に恋をした。
ある人も、その人のことが好きだった。
ふたりは一緒にいることを誓った。
ふたりはとても幸せだった。

1年が過ぎた頃から、その人の体調は思わしくなくなった。
ほんのちょっと疲れ易い程度だったが、リミットがやって来ていることを身体が告げていた。
あともう少し早くある人が現れていれば!!
その人はそう思い、自分の人生を嘆いた。

あの日セットされた時限爆弾が、残りの時間を規則正しく刻んでいく…。

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コメント

勢いで書いたとはいえ、相変わらず尻つぼみな作品だわね。
あとから読んでいて、修正点が多々あるなと…(汗)

投稿: このは | 2008年9月 8日 (月曜日) 00:54

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